精進料理は基本的に肉、魚介類、卵、乳製品を材料に使用しない。それで、はたして人体に必要な栄養素を満たすことができるのか、という疑問に答えるため、以下の考察をおこなった。
- 植物性蛋白質について
精進料理の蛋白源としては、当然動物性のものでなく植物性のものに限られるわけだが、近年の栄養学では植物性蛋白だけで十分なアミノ酸を摂ることができるといわれている。特に大豆は全ての必須アミノ酸を含み、その上蛋白質利用効率もとても高く(牛乳蛋白、卵白、牛肉1.00に対し大豆0.99、小麦粉0.40)、蛋白質供給源としては、最適である。ただ、メチオニンというアミノ酸が少ないが、その点は米を一緒に食べることによって補うことができる。
- 植物性脂肪について
動物性食品に含まれる飽和脂肪酸やコレステロールの摂りすぎが血中や動脈壁のコレステロールを増して動脈硬化症を招くのに対し、植物性脂肪(不飽和脂肪酸が主)は、一旦溜まったコレステロールを除去し、動脈硬化の予防・修復に効果的であることが報告されている。
- 食物繊維
野菜類に多く含まれる食物繊維は、胃や小腸での食物の通過時間を緩やかにして糖や脂肪の吸収を遅らせ、血中でのそれらのレベルの上昇を抑制したり、エネルギー源となる栄養素の消化吸収を一部阻害する。さらに腸内細菌のえさとなり、腸の環境を整えるといった種々の働きにより、便秘・大腸がん・胃潰瘍などの予防や肥満・高脂血症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の予防・治療に有効である。
食物繊維が多く含まれる野菜や大豆、その他の豆類、海草などを材料としている精進料理は生活習慣病予防の観点から優れた料理だということができる。
- ビタミン・ミネラル 旬の野菜
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季節に応じて多種類の野菜、海草、果実を用いるので、ビタミン及びミネラルは豊富である。特に精進料理では旬の食材を使うことを大切にしている。一年中欲しい食材が手に入る今日ではあるが、特に旬の野菜や果物には豊富にビタミン・ミネラルが含まれており、旬と旬以外の野菜では2~10倍抗酸化力が違うと言われている。
しかし唯一問題視しなければならないのがビタミンB12である。ビタミンB12は、赤血球、DNA、神経細胞のまわりの防御層を作るために必須のビタミンで、その不足は、悪性貧血や神経細胞の損傷を招く。不足症状として倦怠感、疲れ、手足のしびれ、記憶力の低下、体重減少が見られる。1日所要量は2μg(1gの100万分の2)と言われごく微量である。このビタミンは、卵(1個は0.9μg含む)、ミルク、魚類を含む動物性の食品に多く含まれているので、一般の人が不足する事は、吸収障害を持たない限りまずない。しかし、植物性の食品にはほとんど含まれていない。
現在、マッシュルームに微量(0.26μg/100g)含まれていると言われている。海藻類(スピルリナ)や発酵食品(納豆、テンぺ)にも含まれていると言われていたが、最近の研究では、不活性型のビタミンB12であるという事で役に立たない事が分かってきた。ここで問題なのが、「完全菜食」を実践している場合である。「卵乳菜食」の場合は全く問題はない。しかし、完全菜食者は、このビタミンの不足が懸念される。実際、欧米の完全菜食者の中から、人数は少ないが、毎年ビタミンB12不足による悪性貧血の報告がなされてきている。日本では、完全菜食者が少ないのかこのような報告はほとんどないようである。
ビタミンB12は肝臓に貯蔵されていて不足状態になるまで数年かかると言われている。完全菜食を実践する場合は、ビタミンB12補助食品の摂取か医師による定期的検査の必要があると思われる。
- 発酵食品
精進料理では、納豆、味噌、梅干、沢庵などがよく用いられるが、これらは種々の酵素を含み、化学分析値以上に有効な作用を発揮するものと推定される。
- アレルギーについて
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強いアレルゲンを持つ食品を順番で言えば、卵、牛乳、大豆、そば...と言われているが、卵と牛乳が圧倒的に強く多く、動物性食品が引き金になりアレルギーを発症する場合が多いようだ。その点植物性食品は比較的に身体にやさしい食物と言えるのではないだろうか。
鎌田の精進だし醤油はかつお節など、動物性食品を一切使用していないため、動物性アレルギーのある方でも、安心してお料理に使っていただけるのが特徴である。
以上のことから、精進料理(菜食)は、飽食の現在において十分見直す価値のある健康食だと言えそうである。
精進料理のなかでも、修行僧の食事は特に質素なもので、入山して2~3ヶ月で7kg以上体重が落ちる者もいるという報告がある。
しかし、その後次第に粗食になれ、また修行による精神の安らぎも手伝って消化吸収がよくなり、少ないエネルギーでも厳しい修行に耐えられるようになるとのことである。修行僧の食事の栄養価については、いくつかの報告があるが、どれも一貫して、栄養所要量(ここでいう栄養所要量とは最低必要量ではない)を下回る結果である。しかし、数百年と続いてきた僧堂の伝統に基き、定期的に特別な食事を摂るなどの工夫がなされることもあってか、修行僧の健康状態は良好だということである。
質素であるが心のこもった食事と、それに対する深い感謝の気持ちを持つことができる磨かれた精神とが活力となって、修行僧の生活の基盤が作られていくのだと考えられる。
これまで述べてきたように、仏教の「殺生戒」に基づく精進料理は野菜が主で、肉・魚介類・卵を使いません。そして生き物を殺さないということが、精進料理では素材を活かすということにつながります。これは道元禅師が典座教訓で「食材は目玉のように(大切に)扱うこと」と述べたことにも表われています。
旬の食材を使うことも大切です。旬の野菜には、体が必要としているビタミンやミネラルが豊富に含まれていることが知られていますし、旬の食材を使うのはその時期に身の周りにあるものを有難くいただく、という仏教的精神にも叶っているからです。
また、精進料理の特色として淡味があげられます。調理の味付けを最少限に抑えることによって、素材本来の味が活きてくるのです。
それでは、旬の素材の味を最大限引き出す調味料として、鎌田の精進だし醤油を使った秋・冬のレシピをご紹介致します。「精進料理」が美味しいだけでなく、栄養的にもバランスのとれた「身体にやさしい」料理であることをご理解いただければ幸いです。


