坂出市・鎌田醤油敷地内の洋館、「淡翁荘」が「四谷シモン人形館」として2004年7月6日から一般公開されています。
昭和初期のレトロな洋館と、あちこちに所を得たように佇んでいる四谷シモンの人形16体が融合し、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
![]() 「機械仕掛けの人形1」2000年 (1階廊下押入れ) |
![]() 「男」2000年 (1階和式トイレ跡) |
![]() 「天使−澁澤龍彦に捧ぐ」1993年 (階段室踊り場上部) |
![]() 「男の人形2」2000年 ・「男の人形1」2000年 (2階大洋室) |
![]() 「木枠で出来た少女3」2000年(2階廊下物入れ) |
![]() 四谷シモン人形館 淡翁荘 |
淡翁荘昭和11年に淡翁・鎌田勝太郎が居宅として建築した鉄筋コンクリート壁構造2階建の洋館。1階は和室中心で約141平方メートル(42.7坪)、2階は洋室中心で約125平方メートル(37.8坪)。施工は当時の「合資会社清水組大阪支店」。 |
人間にとって一番身近でありながら、同時に一番わかりにくいもの。「人形」はいつも、みる人を居心地悪くさせます。人形とは玩具なのか、アートなのか、―――このあいまいさも、そうした居心地の悪さを増幅させます。人形とはいったいなんなのでしょうか。さて、こうした居心地の悪さゆえに敬遠されてきた人形は、逆にその居心地の悪さゆえにアートの最先端をいくものとして注目され、最近、人形が美術館やギャラリーで展示される機会も増えてきました。とはいえ、人形が十分に市民権を得たとはいえないのが現状であり、人形作品がなかなか見られないという声が多いのも事実です。
こうしたなかで、私の作品が鎌田醤油の歴史的な建物「淡翁荘」の中に常設展示されることとなりました。年月を積み重ねたこの洋館は人形作家にとって願ってもない夢のような展示空間であり、私の人形たちの安息の場所に相応しいものです。美術館や画廊とは異なる雰囲気をもった室内で私の作品を体験していただき、人間にとって永遠に不可思議な存在である人形についてあらためて自分の眼と心で考えていただければ幸いです。
最後になりましたが、財団法人鎌田共済会、佐野画廊さんをはじめ「四谷シモン人形館」開設にご協力いただいた皆様に御礼を申し上げます。
四谷 シモン
この旧い建物「淡翁荘」はまるでシモンの人形を迎えるために存在していたかのようだ。人形たちは、昔からその場所に飾られることが決められていたように、ぴったりと洋館の内部に納まっている。時間が緩やかに流れる良き時代の建築物の中で、人形―異界の住人―たちが静かに呼吸する幻想のドールハウスが誕生した。
2000〜2001年に開催された個展「四谷シモン―人形愛」のためにシモンは数点の新作を創った。そのほとんどが常識破りの大きな男の人形で、「髭面やスキンヘッドの裸の大男の人形なんて誰も引き取らないよ」と展覧会に関係した私たちは、その後の行き場を心配していた。しかし運命だったのか偶然だったのか四国の地に運ばれ、廃屋となった病院を転用したテンポラリーなギャラリーに二年間ほど展示されたのち、坂出の旧家の別邸に安住の場所を得た。それが、とびっきりの空間なのだ。昭和初期に建てられたというモダン建築は、シモンの作品、そして四谷シモンという人間が漂わせるゴージャスでデカダント、そして少しデンジャラスな雰囲気に実によく似合うのである。
上に述べたように、ここで公開される人形は近作が中心である。1970〜80年代の美少年や美少女の作品ではなく、男の人形が大半を占めるのだが、そのことがこの館の気品を決定づけているような気がする。妖しさの中にクールなオトナの美学が感じられるのだ。
ところでシモン・ドールの基本形は箱入人形である。これまでの作品をたどると、この館に展示されている《目前の愛》などのように像が箱に封じ込められた様式が目につく。球体関節人形とはいっても高価なシモン作品の身体を動かして玩ぶようなコレクターはいないだろうし、ほとんどは最良の表情にポーズを固定されたままケース(箱)に入れて大切に飾られている。それらは"標本"を思わせるのだが、「像(ひとがた)を箱に閉じ込める」というのも人形愛のひとつの表現形態だろう。壮麗な洋館をまるごと一棟ケースにして、幾体もの人形を閉じ込めてしまった『四谷シモン人形館 淡翁荘』は、現世における人形愛の至上のかたちというべきか。人形とは、人形の魅力(魔力?)とは、そしてオトナのオトコの人形愛とはこういうものなのである。
三上 満良
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